私たちは日々様々な思考をしています。
ある研究では1日に行うセルフトークの数は6万回にも及ぶそうです。
この思考には自分に対しても他人に対しても、こうであってほしいという思い、つまり期待も含まれます。
明確に言葉にしなくても、意識すらしなくても、こうあってほしい、こうあるべきだという期待を持ちます。
そしてその期待値から少しでも外れた時、私たちは憤りや落胆を感じます。
人間関係においては、この期待が良く働くこともあります。
しかし、こと無意識に行った期待は悪く働くことの方が多いように感じます。
それはなぜでしょうか。
今日は、そんなお話です。
相手に期待してはいけない
私たちは他人に対して励ましの意図で「期待しているよ」と言います。
しかし、他人に期待をすることは以下のようなメリット、デメリットがあります。
- 相手にしてほしいことを伝えられる
- 相手が期待に応えようと努力する
- 相手に対して信頼の証になる
- 上のものが下のものに与える感覚が強い
- 叶えられなかった場合に自分ががっかりする
- 相手が落ち込む
- 相手がプレッシャーを感じる
- 相手に対する信頼が下がる
- 期待値を満たしただけではプラスの評価はされない
- 相手に伝えずに勝手に期待しているケースが多い
思いつくままに挙げましたが、デメリットの要素の方が多くなります。
私たちは相手が期待通りのことを行っても、なかなか評価をしません。
なぜなら、”自分”の期待値の範囲内だからです。
しかし、結果が期待外れだった場合は、すぐにマイナスの評価をしがちです。
私たちが相手に期待をして評価するのは、伝えた期待値以上の結果を出した時にほぼ限られるでしょう。
そして、相手が基準をクリアすると勝手に期待値を上げていきます。
子供に接する時と大人に接する時で期待値が異なるように、出来て当たり前と思っていることに対して評価はしません。
期待をかけて評価をするということは、人間関係においてハードルは高いものなのです。
相手からの期待は確認すべし
一方で、自分が相手からどんな期待をかけられているのかは確認しましょう。
私たちは明確に期待値を告げていなくても、心の中で評価基準を持っています。
そして、その基準値を元に相手の行動や結果を人知れず評価します。
それを相手に伝えているかいないかに関わらず、期待外れの場合は駄目なレッテルを勝手に貼りまくっていきます。
もちろん、これは生存本能の一つでもあるので決して悪いことではありませんし、誰しも止めることもできません。
なので、あなたにできることの一つは、自分が明確に合意された基準の上で評価をしているのか、自分の期待値によって評価をしているのかを一瞬立ち止まって考えることです。
もう一つは、相手から勝手な期待をかけられて評価されないよう気を配ることです。
誰かに無意識に期待をかけることは止められません。
そうであれば、自分にかけられている期待値を確認し、それを0.5%でも越えられるよう務めることが主体的な行動です。
相手の期待値を確認することによって、その期待値が高ければ調整することができます。
相手の期待値とズレた目標を持っていたら修正することができます。
期待をかけてくる相手が明確に期待を伝えるべきだというのも正しくはあります。
しかし、相手がそうではないからといって、あなたが不当な扱いを受ける理由はありません。
どんな相手であろうと、あなたが確認をするだけならできます。
ちゃんとした答えが返ってこなくとも、確認をしたという行為自体が、あなたがあなたの人生を生きていることにつながります。
頑張っているのになぜか評価されないという人は、相手の期待値を取り違えている可能性があります。
思い当たる節があれば、この機会に是非確認してみてください。
期待をかけない共同作業
相手に期待をかけない状況で、どうやって仕事を任せたり目標設定をしたりすれば良いのでしょうか。
これには『7つの習慣』にWin-Win実行協定が参考になります。
Win-Win実行協定とは以下の5つの要素で構成されます。
- 望む成果
- ガイドライン
- リソース
- アカウンタビリティ
- 評価の結果
望む結果
望む結果は、いつまでに何を達成するのかを決めます。
達成したと分かる証拠も決めておきましょう。
伝える側は「なぜ、それが望む結果なのか」という背景や理由も伝えましょう。
ガイドライン
ガイドラインは守るべき基準で、規則や方針が該当します。
また相手の習熟度が低ければプロセスについても認識を合わせておきましょう。
注意しなければならないことは、相手が熟練者だった場合にプロセスを詳細に決めてはいけません。
望む結果を具体的にし、どう進めるかは相手に任せましょう。
リソース
リソースは、相手が利用できる予算や人員、サポートなどを決めます。
この範囲内であればいちいち承認を得る必要はないというラインを決めておくことで、相手はスムーズに行動できるようになります。
アカウンタビリティ
アカウンタビリティは説明責任のことです。
報告の頻度や評価基準、評価する時期を決めます。
社内に評価基準があれば、何ができたらどの評価になるのか決めておきましょう。
報告の頻度は相手の習熟度次第で決めます。
習熟度が高ければ少なく、低ければ頻繁に報告してもらいます。
評価の結果
最後の評価の結果は、昇給や昇格、次のステップなど達成度合いに応じてどのような報酬があるか認識を合わせておきます。
社内の評価が相対評価の場合、約束することは難しくなります。
その場合は金銭的な評価だけでなく、機会や責任など複数の報酬を設定しておくと良いでしょう。
もちろん、マイナス評価についても話し合っておくことが大切です。
Win-Win実行協定を結ぶことで、主観的な期待ではなく、客観的な役割を定義することができます。
その上で「期待しているよ」と一言伝えることは信頼の証につながるでしょう。
「期待」という言葉を調べてみました。
あることが実現するだろうと望みをかけて待ち受けること。当てにして心待ちにすること。
デジタル大辞泉
望みをかけること自体は主体的かも知れません。
しかし、かけたあとについては主体的とは言えません。
事の成り行きを他人に任せているからです。
ただ期待をかけるのではなく、Win-Win実行協定にしてお互いに課題に取り組むこと。
それが、期待外れにストレスを感じることもなく、主体的な人生を歩める秘訣かもしれません。
Today’s Quote
目標がWin-Winならば、手段もWin-Winでなければならない。
p.334-l.9