今回は、勝浦雅彦氏の『つながるための言葉』です。
<今回の問い>
言葉を介して他人とつながるためにすべきことは?
コピーライターとして活躍する著者は「おわりに感謝の言葉を」で、コピーライターが書いた『キャッチコピー読本』のようなものを書きたくないと言っているとおり、本書は一般人に向けて書かれた本です。
著者は序章で、「どうして、私の思いは伝わらないのか」という人々の切実な思いに何年も向き合ってきたといいます。
コピーライターとして活躍している著者自身、もともと話がうまいわけではなく、伝えるのが上手という評価をいただいているのは、
「考えて、準備して、練習している」から
と答えています。
本書では、この「考えて、準備する」という点を以下のように章立てることで、読者に「思いを伝える」ための準備を提供します。
第一章:自分とは何者なのか
第二章:言葉を使いこなすには
第三章:愛について
第四章:始まりの言葉 – 第一印象は言葉で決まる
第五章:就活・転職のための言葉
第六章:ビジネスの言葉
第七章:SNSの言葉 – SNSは、ただのツールなのだ
第八章:恋愛の言葉
第九章:世界を良くする言葉
第十章:今、必要な言葉
文章を書くために「自分とは何者なのか」という自己分析が最初に来るのが本書の面白いところであり、15年近く就活指導も行ってきた著者のパーソナリティなのでしょう。
このことについて著者は、以下のように説明しています。
「つながるための言葉」をつくり、相手に伝えていくためには「なぜあなたがそれを伝えることができるのか」を知るという助走が必要なのです。
そして、第二章の「言葉を使いこなすには」では、「言葉とはある方向に人の感情を動かす矢印」としたうえで、
研ぎすまされているほど、深く刺さる
(それによって傷つくこともある)。
と説いています。
書籍『7つの習慣』には以下のような言葉があります。
人の内面の奥底に潜んでいるもっとも傷つきやすい部分を見ずに、表面に現れる他愛のない行為だけに反応するのは、人の心という聖域を踏みにじることなのである。
『7つの習慣』
そして、第5の習慣では「自分自身が心を開くことによって、(中略)傷つくこともあるだろう。」と言っています。
お互いが本音で話すがゆえに、傷つけ合うこともあるとしています。
しかし、傷つけあってでもお互いに理解することが『7つの習慣』で目指す「公的成功」でもあるのです。
著者が本書で自己分析から始め、「なぜあなたがそれを伝えることができるのか」を問うていることは、まさに本音で思いを伝えるための準備だと言えます。
この点で、本書はただ考えていることを言葉にする技術を学べるだけにとどまらない内容になっています。
そして、第三章から始まる様々なケースの中で、数多くの引用を用いながら、言葉を紡ぐことについて著者の思いを読者に届けていきます。
本書を読むことで、言葉を紡ぐとはどういうことなのか、またそれによって世界とつながるとはどういうことなのかについて、深く考えるきっかけを得られるでしょう。
最後に著者の言葉から。
その言葉は限られた特殊な人にしか紡げないものなのでしょうか?そんなことはありません。
気づいていないだけで「世界を良くする言葉」はあなたからも生まれているのです。
今日あなたは、誰とどんな言葉でつながりますか?