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周囲に依存している人をリーダーとして導くときに考えること

「自分はこんなに頑張っているのに評価されない!」

「自分はこんなに仕事ができるのに昇進しない!」

本当に頑張っていて、能力がある人が認められない状況ももちろんあります。
しかし、多くの場合、その人の過大な自己評価と自意識が、周囲からの評価を得られない原因ではないでしょうか。

書籍『7つの習慣』では、「成長の連続体」として「依存」「自立」「相互依存」と3つの状態を定義しています。
上記のように周りに原因を追求している人は、依存状態にあるといえます。

コヴィー博士は依存状態にある人とはシナジーを創り出せないと生前おっしゃっていたそうです。
つまり、人間関係の中で他者とシナジーを創り出すには、お互いが自立以上の状態にある必要があるのです。

私たちの日常には、依存状態の誰かが少なからずいると思います。
その人と同級生や友人・知人という関係であれば、ある程度割り切って付き合えばよいでしょう。
しかし、あなたが組織のリーダー的役割を担い、依存状態にあるメンバーがいたとすると、そう簡単ではなくなりますよね。

今回は、組織のリーダーとして依存状態の人にどう接していけばよいのかに思考を巡らせてみました。

自覚をすることが自立への第一歩

人が自立状態になるためには「自覚」をすることが必要になります。

そもそも、自分が自分自身をどう見ているか、他者をどう見ているかを自覚していなければ、他者が自分自身をどう見ているか、他者は世界をどう見ているかわからないだろう。

『7つの習慣』p.75-l.7

自覚は人間を人間たらしめる四つの能力の一つだと『7つの習慣』では言っています。
この自覚がなければ、自分の考えや行動が周囲からどう見られているのか判断がつきません。
では、依存状態にある人にどうやって自覚を持たせたらよいのでしょうか?

『7つの習慣』では他人をどうこうできない

まず、7つの習慣もNLPも他人を操るためのものではないということは押さえておくポイントです。
自分が人生をより良く生きるためのものですね。

そもそも相手に自覚を促すこと自体、問題を自分の外に置くアウトサイド・インの考え方といえます。
相手の考えや態度が変わるのを待つのであれば、その状況を他人任せにしていることにもなります。
それでは自分の人生を生きているとはいえません。

もちろん、相手に自覚を促すために主体的に影響を与えていると言えば、インサイド・アウトであるとも考えられます。
しかし、影響の与え方には注意が必要です。
もし、説得や何かしらのテクニック、または叱責や命令など強制的に自覚させるのであれば、それは力に頼っていることになります。
力を借りることは、私たちを弱くします。
ちゃんとした人間関係を築かず、ただ立場や権力を使うだけでは、一時的に相手を従わせることができても、すぐに元の状態に戻ってしまうでしょう。

変化には相手の意思が必要です。
7つの習慣もNLPも、自分が、相手がより良く生きたいと思うときに最も効果を発揮するものなのです。

依存状態にある人も最善を尽くしている

では、依存状態にある人に対して、私たちは何ができるのでしょうか。

まず考えなければならないのは、人はその時々で最善を尽くしているということです。
もちろん、中にはあなたを困らせてやろうという魂胆で接してくる人もいるでしょう。
しかし、多くの人は一生懸命やった結果として依存している状態なのです。
自分の知識や経験、能力をフルに活用しても、今は自立状態になれないのです。

しかも、その人たちは自分が依存状態にあるとは考えていません。
成功の連続体の図を見せたら、自立や相互依存にいるとさえ言うかもしれません。
依存状態にあることが普通であり日常なので、本当に自立した状態がどんなものなのかを知らないのです。
彼らからしてみれば一生懸命やっているのになぜ行いを正されなければならないのか、自立した人間となぜ扱われないのか理解に苦しむのです。
依存は個人の成熟の問題なのです。

なので、彼らは彼らなりに頑張っている、それを私たちが認めることから始めなければなりません。

あなたが相手の世界を理解することから始める

もし依存状態にある人との関係を良くする必要があるのであれば、彼らを理解することから始めましょう。

あなたが依存状態にいなければ、彼らと同じように、どうして彼らがそういう発言や行動をするのか理解に苦しんでいるかもしれません。
それは彼らとあなたの住む世界が違う、彼らが見ている世界とあなたが見ている世界が違うからです。
正しくは人それぞれ見ている世界は異なるなのですが、状態の異なる人たちの間ではこの違いはことさら大きくなります。
なので、まず相手の世界を知ることが大切になります。

しかし、依存状態にある相手があなたの世界を知ることは前述のように難しいわけです。
体験したことのない世界を理解することは、私たちが四次元の世界を理解しようとすることに似ています。
とすると、あなたが依存状態にある相手の世界を理解する方が圧倒的に早いのです。
なぜなら、誰でも他人に依存した状態を経験してきていますし、自立や相互依存の状態にいる人も状況によっては依存状態になることもあるからです。
一度でも経験したことのあるあなたが相手の世界を紐解くほうが早いのです。

相手を理解する準備を整える

相手の世界を理解する方法は、今のところ二つあると考えています。
1つは、相手が見ている世界を自分も同じように見えるくらいまで傾聴すること。
そしてもうひとつは、NLPのワークであるポジション・チェンジを行なうことでしょう。
(もし、他に良い方法を知っている方がいたら教えてください。今後のコーチングや思考の参考にしたいと思います。)

それぞれの説明は別の機会に譲りますが、『7つの習慣』から以下を引用しておきます。

自分の経験談、自分の自叙伝を得々と聞かせるのではなく、息子を本当に理解しようという姿勢によって信頼口座にたくさんの預け入れをしたから、息子も心を開き、少しずつ掘り下げ、ようやく本当の問題を打ち明ける勇気を持てたのである。

『7つの習慣』p.365-l.15

いずれの方法を取るにせよ、一つだけ条件があります。
それは、相手の世界を受け入れるには、まずはあなたが自立していなければならないのです。
あなたが自立状態にあって初めて、相手を理解する土台が得られるからです。
『7つの習慣』では、相手を理解することを以下のように説いています。

相手の話を深く聴くには、強い安定性が必要になる。自分自身が心を開くことによって、相手から影響を受けるからだ。傷つくこともあるだろう。それでも相手に影響を与えようと思ったら、自分もその人から影響を受けなければならない。それが本当に相手を理解することなのである。

『7つの習慣』p.349-l.11

自分自身がまず依存状態を脱して初めて相手のことを理解できる状況になります。
相手を本当に理解するということは、それだけ大変なことなのです。
依存状態にある人があなたの言うことを理解できない理由もうなずけるのではないでしょうか。

自覚をするかどうかは相手次第

相手の世界が理解でき問題点が明らかになったら、あとは一つひとつの課題に一緒に取り組むだけです。
この段階になってようやく相手はあなたの主張に聞く耳を持ち、自分の行いに対して自覚を持つ準備を整えられます。
相手が自覚を得られれば、そこから一歩一歩自立への道を並走していきましょう。

しかし、ここでも気をつけなければならないことは、相手の自覚をあなたが強要してはいけないということです。
自覚を持てるかどうか、持つかどうかは、あなたの課題ではなく相手の課題だからです。

およそあらゆる対人関係のトラブルは、他者の課題に土足で踏み込むこと–あるいは自分の課題に土足で踏み込まれること–によって引き起こされます。

『嫌われる勇気』140-l.16

相手の意思を無視して自覚を促せば、相手は再度あなたと距離を置き心を閉ざしてしまうでしょう。
相手があなたの話を聞けるようなら幾分かの助言も可能ですが、また感情的になるようであれば傾聴に切り替えなければいけません。
行ったり来たりを繰り返しながら玉ねぎの皮を一枚一枚むくように、相手の心の核心に近づいていくのです。

できることをしたのであれば、どんな結果でも受け入れて良い

では、いっこうに自覚を持たない相手にはどう対応したら良いのでしょうか。
『7つの習慣』ではこう言っています。

自分の力ではどうにもできない問題なら、笑顔をつくり、穏やかな気持ちでそれらを受け入れて生きるすべを身につける。

『7つの習慣』p.101-l.3

あなたはよく頑張りました
自分を成長させ、時には傷つきながらも相手を理解することに務め、一緒に相手の課題に向き合いました。
それでも成果が得られないのであれば、その状況を一旦受け入れるのがよいでしょう。

仮にあなたが5人のチームのリーダーだとした場合、依存状態の一人に時間を取られ、その他の4人をないがしろにしてしまう方がよろしくありません。
あなたが講師だった場合、その他の参加者を置き去りにすることはできません。
どんな組織や人間関係においても、程度の差こそあれ20%の人とはうまくいかないものです。
その20%に時間や労力を費やすよりも、残り80%の人たちに貢献することを考えたほうが良い結果を生むでしょう。

周りから批判されているという幻想

もちろん、依存状態の人を自立に導けなかった自分の力不足は認めなければいけないでしょう。
私も、過去何度も組織のパフォーマンスを最大化するために、依存状態にある人を切り捨てざるを得なかった経験があります。
未だにその人のことを思い出すと、自分の力の無さに申し訳なかったと思い反省することがあります。

もちろん、強い責任感や使命感から、その人と向き合い続けるという選択もありです。
何もチャレンジすることなく投げ出してしまうこともよくありません。
しかし、もし、もう限界だと思うのであれば、「ごめんね」と思いつつ依存状態にある人には退場していただくのも選択肢としてありではないでしょうか。
その人にとっても、自分を認めてくれない会社にい続けるよりは、その人を評価してくれる会社を探すほうが良いかもしれません。
その人が気持ちよく受講できるセミナーやコーチが他にいるかもしれません。
そういう機会を提供することも、組織のリーダーとしては必要な選択です。

そして、今回のことを糧に、より良いコミュニケーションができるよう今後精進すれば良いのです。
将来、同じような人が現れた場合でも対処できるよう、これから努力すれば良いのです。
あの時あの人がいたから、自分は今成長できていると言えるようになれれば、それでも良いと思います。


ともすれば、私たちは他人の状況を問題だと判断し、なんとか変えてあげようと考えます。
しかし、それは私たちの世界で相手を見たときにそう見えるというだけです。
相手がどんな世界に生きているのか、それを理解しないまま相手を操ろうとすれば、人間関係の溝は深まっていくばかりでしょう。

まずは相手を理解すること。
相手の現在地がわかったら、そこに相手を迎えに行きましょう。
相手があなたと歩むことに合意したときにはじめて、自分が連れていきたい場所へ相手を連れて行くことができるのです。

説得されても人は変わるものではない。誰もが変化の扉を固くガードしており、それは内側からしか開けられない。説得によっても、感情に訴えても、他人の扉を外から開けることはできない

『7つの習慣』p.68-l.13

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